Case Study

高台にある家(茨城)(「日本エコハウス大賞2019」審査員賞)

豊かな緑に囲まれた「高台にある家」は、デザイン・性能・コストの三位一体を実現した、住まい手の暮らしに寄り添うエコハウスです。

日本エコハウス大賞2019審査員賞(松尾和也賞)受賞作品。
 

豊かな周辺環境を生かし「自然の中に馴染む住まいとすること」をベースに、エネルギー消費を抑えた「快適に過ごせる家」を目指しました。

子供達が裸足で外へ駆け出し、気持ちの良い芝生で遊ぶ。そんなイメージのもと、広い南庭と建物を緩やかに繋げるために、大きな開口部を設け、外部と内部の段差を小さくし、庭と一体的な空間となるよう計画しました。大きな開口部には、雨や夏の日差しを遮るよう下屋を設けました。

また、外部の仕上材に、焼杉や米杉・米松の木製サッシを用いて、素材が持つ表情を生かした建物としています。内部の仕上材は、無垢の床材や珪藻土などを用いて、経年変化を楽しみながら心地よく過ごせる空間としました。


温度差のない快適な住まいとするために、躯体性能を向上させる方法として付加断熱工法を採用しました。窓の仕様はペアガラスや真空トリプルガラスを用い、熱損失を抑えつつ日射を効率的に利用できるようになっています。

建物の空調機としてエアコンを夏用・冬用の2台設け、各1台づつの稼動で建物の温度調整を行っています。空気の流れを考慮し、間仕切りの少ない開放的な空間としながら、
プラン構成を工夫することで視覚的なプライバシーを確保できる住まいとしました。

また、中間期のオーバーヒート対策として、効率的に換気が行える窓の配置を考え、エネルギー消費を抑える工夫を施しています。

 

仕様構成図・各仕様データ

高台にある家(矩形図)

 

高台にある家(南側立面図)

 

高台にある家(北側立面図)

 

高台にある家(西側立面図)

 

高台にある家(東側立面図)

 

高台にある家(平面図)

 

高台にある家(外皮性能計算結果)

 

高台にある家(一次エネルギー計算結果)

 

高台にある家(冷暖房エネルギー計算結果)

 

建物データ

所在地 茨城県筑西市
工法・規模 木造軸組2階建て
延床面積 157.2m2
竣工 2019年3月
設計 田嵜建築設計事務所
施工 株式会社 丸萬建設

 

性能データ

1次エネルギー消費量(年間) 117.18kWh/m2
暖房負荷(年間) 11.64kWh/m2
(最低室温20℃)
冷房負荷(年間) 10.40kWh/m2
(最高気温27℃)
熱損失係数(Q値) 0.99W/m2・K
外皮平均熱貫流率(Ua値) 0.349W/m2・K
相当隙間面積(C値) 0.15cm2/m2

 

断熱仕様

屋根

住宅用吹込断熱材22K 330mm
(マグブローライト)


外壁

外部付加断熱:高性能グラスウール16K 105mm
(イゾベール・コンフォート)

充填断熱:高性能グラスウール16K 120mm
(イゾベール・コンフォート)

基礎

・基礎立上り(内断熱):押出法ポリスチレンフォーム断熱材3種bA 75mm

・スカート断熱:押出法ポリスチレンフォーム断熱材3種bA 75mm・W450

・高性能トリプルガラス樹脂窓
・木製サッシ

玄関ドア

高断熱玄関ドア

シート イゾベール・バリオ エクストラセーフ(調湿気密シート)
テープ イゾベール・バリオ マルチテープSL+
イゾベール・バリオ KB1
暖房

薪ストーブ + 床下エアコン 4.0kW

冷房

エアコン 4.0kW

給湯

ハイブリット給湯システム

換気

第一種熱交換型換気

 

設計・施工者より

丸萬建設 田嵜様

株式会社 丸萬建設 田㟢 人視氏

エネルギーの消費量を抑える方法として、躯体性能を高めることをベースに建物づくりに取り組んでいます。外気温に左右されない室内環境を作ることができれば、冷暖房のエネルギーを抑えることができ、室内に生じる温度差も解消され、快適な住環境となります。気密性を高めることで換気効率が良くなり、計画的な換気を行うことができるようになります。

このような、建物の本質にある"機械に頼らずに得る高性能"として、半永久的に効果を発揮してくれる断熱材や窓に着目し、長く快適に住み続けることができる家づくりを目指しています。

"長く住む家"の仕上材には、無垢材や珪藻土など、素材が持つ魅力を生かし、時間と共に変化する素材を採用しています。人と同じように家も変化する。時間が経つにつれて味わい深く変化する素材に"愛着"を感じ、そこで暮らすことで生まれる傷などは"思い出"として家に記録されていきます。手入れをしながら丁寧に住むことで、味わい深い魅力的な空間となり、そこに住む家族ならではの住まいとなります。

住宅を計画する際に心がけていることは、住む人に合った空間を作ることです。人によって行動パターンは異なります。何度もヒアリングを重ねることで、その人らしい住まいが形になっていきます。その中で、日射の取り入れ方や遮り方、音環境への対応、住んでからのメンテナンス等に配慮しながら計画を進めていきます。こうして作られる住宅は、1つ1つ違うものであり、住まい手らしい「マルチ・コンフォート・ハウス」になるのではないかと思います。 


設計・施工: 株式会社丸萬建設/田㟢建築設計事務所

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