Case Study
高断熱リフォーム事例:上山の家(「大改造!!劇的ビフォーアフター」放映物件
- ABC朝日放送局の「大改造!!劇的ビフォーアフター」で、2016年3月20日に『雪かきしながらトイレに行く家』として放映された物件。
- 冬は非常に寒く、夏は暑い山形で、快適な住まい環境の実現をめざし、高性能グラスウールをふんだんに使用した高断熱リフォームに挑戦。
リフォーム前の状況
- 無断熱住宅
- 家族4人が古い薪ストーブで暖めた8畳の居間に集まらなければならない、非常に寒い屋内
- 脱衣所がない寒い浴室
- 離れにある汲み取り式のトイレは、雪が積もった時は雪かきしながら行かなければらない
- 外から鍵がかけられない玄関
高断熱リフォーム内容
- 母屋を減築し改修
- 減築によるコストカット分を断熱・気密性能向上に充てる
- 断熱材はコストパフォーマンスが良い高性能グラスウールを主に使用
- 断熱は、通常の2倍程度を使用
- 壁の断熱は、柱の間(充填断熱)だけでなく、柱の外側にも施工(外付加断熱)
- 基礎の外側を断熱材で囲む基礎断熱を採用
- 窓には、三層ガラス窓を使用
- 暖房設備として、玄関土間に温水薪ストーブを設置
- 薪ストープでお湯を沸かし、玄関土間下のパイピングに温水を供給し床暖房として活用
- 蔵の天井板、母屋の化粧梁など、古材を活用
仕様構成図・各仕様データ
建物データ
所在地 | 山形県上山市 |
完成年月 | 2016年3月 |
家族構成 | 4人 |
構造 | 木造軸組工法 |
断熱仕様
外皮平均熱貫流率(UA値) | 0.4 W/m2・K | |
熱損失係数(Q値) | 1.3 W/m2・K | |
断熱 | 屋根 | 高性能グラスウール28K210mm |
壁 | (充填)高性能グラスウール28K120mm (付加)高性能グラスウール16K100mm |
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基礎 | EPS断熱材 | |
窓 | 木製トリプルサッシ、樹脂トリプルサッシ | |
暖房設備 | 給湯機能付き薪ストーブ | |
換気設備 | 熱交換型換気システム |
設計・施工者より
設計者(匠)渋谷達郎氏
断熱気密にこだわった古民家と蔵のフルリフォーム。
断熱材をたくさん入れるだけで、こんなにも現場が暖かいなんて。建築の性能の違いを実感しました。
一番うれしかったのが、クライアントがものすごく気に入ってくださったこと。「予算的に新築もできるのでは?」と知人から言われたが、古い梁や柱は、新築ではできないもの。元の骨組を生かしたリフォームにして本当によかった。お金では買うことのできない「時間のデザイン」を生かしたリノベーションに関われたことを嬉しく思います。
雪国の住まいは、見えないところにお金がかかります。積雪(積雪荷重)に耐える構造、暑さ寒さに耐える断熱、冬季の地面凍結(凍結深度)に耐える基礎。とっても大切なこの3つは、いずれも竣工後は目に見えないところ。それだけに、住まい手の理解もなかなか得にくい部分でもあります。特に、現行の断熱の基準は、今のライフスタイルに対して、十分とはとても言えません。
高い断熱性の効果は、体感していただくのがいちばんわかりやすいですが、直接的には日々の光熱費にも反映されます。全体の予算(総工費)の約0.5~1割を断熱などの建物の基本性能をあげることに投資するだけで、日々の光熱費低減分で十分に元が取れる計算になります。
個人的には、太陽光パネルをあげるのであれば、その分を建物の基本性能(断熱性能)をあげるところにまわすことをお勧めしたいです。
設計者(匠): 渋谷達郎 + アーキテクチュアランドスケープ / 一級建築士
施工会社 : 高橋工務店(山形県天童市)
お施主様の声
実際の住み心地や感じたことなど、お施主様の声をご紹介します。
外観について
- 色がきれいになり、建物が1/3ほどに小さくなると聞いていたが、とても大きく見える。
- 古い家にあった戸袋を残してくれたり、薪ストーブ用の薪置き場を、薪の乾燥と屋内の目隠し両方を兼ねる場所にするなど、工夫が素晴らしい。
屋内環境について
- 以前の家では、真冬は室内がマイナスの温度になるときもあったが、今はとても温かく過ごせている。
- 薪ストーブの温水を床下に通すことで、体の芯まで温まる。
- 以前は暗かった屋内が、居室、キッチン、お風呂、トイレ、どこも明るく、気分も明るくなる。
- 古い家の梁をうまく見せて、故郷の施工方法「朝鮮張り」の床を取り入れるなど、嬉しい心配りが随所に見られる。
- 介護を必要とする義母にとっても、温かい環境が心地よく、更に庭を望める明るい部屋で過ごすことができて良かった。
- バリアフリーで開放的な空間であるため、家族や訪問者とのコミュニケーションも増やせる。
- 今の室内環境については、妻も非常に満足している。
初めての夏を過ごして
- 昼間に、外気温が35℃程度になったときでも、エアコンなしで室温を27℃程度に保てている。
- エアコンを少しつけるだけで家全体が涼しくなる。
- 以前は雨音がうるさかったが、今は防音効果なのか、ほとんど雨音が聞こえなくて、非常に静かな空間となった。
- 蔵の2階の空間は、若干、熱がこもっている感じがする。